市内で全900室を超え、門真は“泊まるところ”に変化しつつあるようです。2024年5月の「アパホテル大阪門真市駅前」(元町)による増築棟の新設に続き、来月2025年7月30日には栄町のパチンコ店跡地で200室の「ホテルアインズ(EINS)大阪門真市駅前」がオープンを控えます。
門真でビジネスホテルと言えば、図書館近くでレンガ調ビルの「門真パブリックホテル」(新橋町、88室)と、京阪線を渡った反対側(大日駅寄り)の元町に位置する緑色が特徴的な「門真ターミナルホテル」(104室、2021年にアパホテルが買収)の2つが1980年代から存在。
パナソニック(旧松下電器産業)の本社ということで全国から一定の宿泊需要があり、守口市駅前の再開発時に誕生した松下興産(現MID都市開発)系の旧「プリンスホテル守口」(1985年開業、守口ロイヤルパインズホテルを経て現在は175室の「ホテルアゴーラ大阪守口」)など守口市側にある各ホテルとともに、パナソニック関連のビジネス宿泊を支えていました。

1985(昭和60)年に守口市駅前の再開発で京阪百貨店などと同時に誕生した「ホテルアゴーラ大阪守口」(175室)は当初、松下系企業が主導する「プリンスホテル守口」として運営されていた(2025年6月)
プリンスホテルは全国系ですが、足場の弱い大阪(守口)への進出には松下系企業が大きく関わっており、全国系ではない門真の2ホテルも含め、特に門真では“地場企業”が局地的に宿泊事業を営んでいたといえます。
そんな状況に変化が生まれたのが2001(平成13)年6月に「スーパーホテル門真」が進出したことでした。
今では全国に170店(2024年3月末)を展開するスーパーホテルですが、2001年当時は「1泊5000円」というビジネスモデルが注目され始めていた頃で、門真は全国25店目、大阪府内では3店目という成長期の段階。
運営企業は大阪と深い縁を持つ不動産事業者系ながら、ホテルは九州から始めた事業でした。
大阪モノレールの門真開業(1997年)から4年を経て一定の需要を見込めたのか、大浴場を備えた“温泉付きビジネスホテル”も、チェーン系ホテルの進出も門真で初めての出来事でした。
門真市内のビジネスホテル一覧
- 門真パブリックホテル(88室、新橋町2-8):門真プラザを抜けた先、門真図書館(新橋市営住宅3号棟)のとなりで1984(昭和59)年に開業した8階建ての老舗ビジネスホテル。中央環状線沿い以外に位置する唯一の施設。市役所にも近い。1階でレストラン「クレメンテ(Clemente)」を営業
- アパホテル大阪門真市駅前(211室、元町2-6):唯一の元町側、パナソニックの北門真地区(松葉町)や西門真地区(西三荘駅前)へ行きやすい。1987(昭和62)年開業の「門真ターミナルホテル」を2021(令和3)年11月にアパが買収。2024年5月の南館(91室)新築で部屋数は門真最大に
- スーパーホテル門真(105室、新橋町15-20):大阪モノレールの門真開業から4年後、駐車場跡を使い2001(平成13)年6月に門真初となる温泉浴場付き7階建ての建物で開業。スーパーホテルが全国展開し始めた初期、西区江戸堀(旧ホテルリンクス)と堺マリティマでの出店に続く大阪府3店目
- ホテルリブマックス(LiVEMAX)大阪門真(122室、新橋町15-24):スーパーホテルの門真市駅寄りに隣接していた駐車場跡を使い、2019(令和元)年12月にオープンした全国系。進出時点では部屋数が門真最多だった。10階建ての建物1階には「セブンイレブン門真新橋町店」が同時期に出店
- 東横INN(イン)大阪門真市駅前(196室、栄町17-3):日活ボウリングセンター(2015年7月閉店)跡を使い、門真のホテルで最高層となる14階建てで2020(令和2)年3月オープン。裏手至近に銭湯「ナショナル温泉」(サウナ有)が位置。リブマックス前まで歩道橋を使い中央環状線を横断可能
- ホテルアインズ(EINS)大阪門真市駅前(200室、栄町6-1):東横インの並び(門真市駅寄り)にあったパチンコ店跡を使い、株式会社総合経営(大阪市北区)が2025年7月30日にオープンを予定する温泉浴場付き施設。トリプルやフォーベッド、スーペリアツインルームなども備え観光客にも訴求
(2025年6月現在、全施設とも最寄りは門真市駅)
2019年から全国系が相次ぎ進出
2001年のスーパーホテル進出以降は長期にわたって動きのなかった門真市内のホテル事情ですが、関西への訪日客増加もあって2019(令和元)年12月に「ホテルリブマックス(LiVEMAX)大阪門真」(122室、新橋町)、翌2020(令和2)年3月には「東横INN(イン)大阪門真市駅前」(196室、栄町)と大阪中央環状線(大阪府道2号)の左右に全国系チェーンが相次ぎ進出し始めます。
翌2021(令和3)年11月になると、かつて守口市の不動産企業が創設した門真ターミナルホテルをアパホテルが買収し、「アパホテル大阪門真市駅前」に衣替えするだけでなく、2024(令和6)年5月には宿泊者用の駐車場を活用して隣接地に新館(南館)を増築。計211室の門真最大となるビジネスホテルにリニューアルしています。
そして、来月2025年7月30日には200室の「ホテルアインズ大阪門真市駅前」が東横インの並びでオープンを予定しており、ホテルアインズの進出で門真のホテル部屋数は総計922室に達し、短期間のうちに900室を突破することになりました。
部屋数自体は1000室を超える
これらのビジネスホテルに加え、門真図書館から徒歩5分、門真市駅からは徒歩7分ほどの住宅地に老舗のビジネス旅館「錦荘」(14室、柳町7-17)も営業しており、空きがある場合は宿泊予約サイトでも予約が可能。2025年6月時点でビジネスホテルの宿泊料金が1万円前後に高騰するなか、長期滞在も可能なビジネス旅館ならではの安価は魅力です。
また、最近は減少傾向にありますが、いわゆる“ラブホテル”や“ファッションホテル”などと呼ばれる短時間利用も可能な宿泊施設が門真市内に3つ残っており、いずれも中央環状線沿いに位置。
大阪市鶴見区焼野と守口市寺方錦通の市境至近にある「キャットハウス(CAT HOUSE)門真」(24室、桑才新町14-8)をはじめ、コストコホールセール門真倉庫店から近い「デザインホテル・マホーラ門真」(29室、松生町2-4)と、少し門真南駅寄りの「HOTEL X(ホテルエックス)」(32室、桑才新町2-15)の3施設を合わせると合計85室におよびます。

写真上から「キャットハウス(CAT HOUSE)門真」(24室)、「デザインホテル・マホーラ門真」(29室)、「HOTEL X(ホテルエックス)」(32室)、いずれも中央環状線沿いに位置(2025年6月)
門真市内のビジネスホテル6施設計922室に、ビジネス旅館の14室、ラブホテル3施設の85室を合わせると、市内では計1021室が日々提供されることになりました。
また、ホテルではありませんが、2024年1月には古川橋駅近くの住宅街で海洋堂などが1日1組限定の「OTA HOUSE(オタハウス)」(末広町11-16)というゲストハウスの運営を始めており、小規模な宿泊施設ながらフィギュアに囲まれた空間のインパクトは抜群です。
遊技施設の衰退→ホテルが進出
門真で宿泊、というとパナソニック関連の出張需要くらいしか思い浮かばない土地柄だったのが、いつの間にか全国系チェーンの進出が相次いでおり、大阪市内だけでは吸収しきれないほど、ビジネスホテル需要が旺盛と見えます。
図書館近くの門真パブリックホテルとビジネス旅館錦荘を除き、門真市駅から徒歩圏の中央環状線沿いに位置しているのも特徴で、車による利用者も目立ちます。
すべてのホテルから徒歩圏内に位置する「ららぽーと門真・三井アウトレットパーク大阪門真」や「コストコ」での買物を目当てとする宿泊客もいるようですが、私が見る限り、門真のビジネスホテル客の7割以上は仕事での出張者という雰囲気で、関東方面のナンバーを付けた建築・工事関係者も見かけます。
このあたり、大阪の動脈である中央環状線(高架上部は近畿自動車道)沿いで、第二京阪道路も至近という門真のビジネスホテル環境は強みとなっているようです。
一方、宿泊需要の高まりが門真への進出を加速させているのは間違いないのですが、土地利用の転換という側面も見逃せません。
ホテルリブマックスは門真市駅前のパチンコ店駐車場、東横インはボウリング場・バッティング施設、アインズは同名のパチンコ店(2023年1月閉店の旧「アインズ癒し館門真店」)跡地をそれぞれ活用しての進出で、いわば“昭和の遊技場”が衰退したこともビジネスホテルの進出が活発化した背景にあるのではないでしょうか。
同じく昭和のビジネスで衰退しているラブホテルの場合は目立たない場所かつ規模もそれほど大きくないため、小規模マンション・アパートなどとして住宅地化するしかないケースが見られますが、遊技場は駅近くなど立地が良いうえに一定規模の広さを持つ場合が多く、ビジネスホテルへの転換にも適しています。
門真宿泊時に訪れたい3つの場所
門真のホテル宿泊時の食事や買物は、「門真プラザ(イズミヤ)」付近と、ららぽーと門真へ行けば不便はないはずですし、新橋側のホテルなら「セブンイレブン(門真新橋町店など)」、栄町側なら「ファミリーマート門真栄町店」、元町側は「ファミリーマート(門真元町店など)」ほか、どのホテルも近所にコンビニが営業しています。
観光スポットとしては、門真プラザ内の「イズミヤショッピングセンター門真」3階にある「海洋堂ホビーランド」(2021年11月オープン、平日11:00~17:00/休日10:00~18:00、水曜休館、入場料大人1000円など)と、西三荘駅近くのパナソニック本社敷地内にある「パナソニックミュージアム(松下幸之助歴史館・ものづくりイズム館)」(2018年3月オープン、10:00~17:00、日曜・祝日休館、入場無料)は、門真を象徴する著名企業の歩みを存分に知ることができる施設です。
そしてもう1カ所、門真に宿泊した際に一度は訪ねて見てほしいのが東横インの裏手近くにある銭湯の「ナショナル温泉」(15:00~23:00、木曜定休)です。
各ホテルから徒歩圏にある同銭湯の周辺は、少し昔の門真を象徴するような風景で、車が1台通れるくらいの道路の両脇に木造モルタルづくりの“文化住宅”が密集し、その中心にある銭湯の名は、門真を代表する企業にあやかった“ナショナル温泉”。まさに門真の昭和がこの一画に残されているのです。
かつて夕方になると工場帰りの労働者たちと、文化住宅にいやというほどいた子どもたちが銭湯に集い、帰路には子どもたちは狭い路地で遊び、大人たちは文化住宅の1階に設けられた居酒屋風の小店舗で酒をあおっていたことでしょう。
昭和期は市内のどこでも見られる景色なので気づかなかったのですが、今見るとその住宅密集ぶりは門真のイメージ悪化にもつながりかねない風景。一方でこうした住宅地で暮らした人々が経済成長期のものづくりを支え、門真の街を形作ってきたことを忘れてはならないと強く思わされます。
同地も現在では住んでいる人が少なくなり、往時のような活気は感じられませんが、パナソニックミュージアムや海洋堂ホビーランドとともに、門真の原風景を垣間見られる場所として立ち寄る価値はあるはずです。
なお、ナショナル温泉は、銭湯としては比較的新しい施設といえ、サウナもあって誰でも利用しやすい雰囲気なので、ビジネスホテルの狭い風呂での入浴を避けたいときにもおすすめのスポットです。
(2025年6月10日時点の内容です)