門真市が新サイト公開、「ちょうどいい街」のイメージ戦略を考える

2023年11月2日に新たなデザインで公開された門真市公式サイト
再開発

門真市が市の公式サイトをリニューアルし、今月(2023年)11月2日に公開しました。2000(平成12)年7月のサイト開設から23年超で“四代目”となるデザインは、よりスマートフォンでの閲覧にフィットさせたように見えます。

市の公式サイトについては、ちょうど1年前に「門真市の公式サイトは創設22年、“警告トラブル”契機に未来を思う」という記事で、サイト開設からこれまでの歴史を振り返りましたが、11月1日まで使われていたピンク色を基調としたデザインは2019(令和元)年10月に始まったものでした。

2019年10月から2023年11月1日までの公式サイト

スマートフォンへの対応を全面に打ち出した前回の刷新から4年が経ち、内部のシステム変更も含めて更新の時期となっていたこともあって今回のリニューアルにつながったようです。

緑を基調とした新たなデザインは、よりシンプルで見やすく使いやすくなったように個人的には感じました。

一方、今回の刷新で見えやすい場所に配置された「(サイト内)キーワード検索」の窓ですが、検索するとグーグルの表示結果が少し古かったり、不要ともいえる文字広告が上部に出てきたりするのは、無料システムを使わざるを得ないデメリットといえるでしょうか。

「ちょうどいい」が招いた過去

今回、公式サイト内を見ているうちに“別サイト”のようになっている「門真市シティプロモーションサイト」という特設ページに行きつきました。

そこに表記されていたキャッチコピーに思わず唸らされました。

  • 「ちょうどいい」まち かどま

確かにその通りで、よく言い当てたコピーなのですが、それしかないんかい!と思わず突っ込んでしまいそうに。それなりに良い交通の利便性や、住宅の適価は門真の強みであることは間違いありません。

公式サイト内に特設されている「門真市シティプロモーションサイト」

たとえば、リクルートの「SUUMO(スーモ)ジャーナル」が今年9月に発表した「梅田駅まで電車で30分以内の中古マンション価格相場が安い駅TOP15」というランキングでは「1位:萱島1930万円」「2位:大和田1980万円」「13位:古川橋2335万円」なんていう結果も出ており、市内駅周辺の“お買い得感”が証明されています。

  • 「大阪市にほど近く、暮らしやすい。ちょうどいいまち、門真。」

まさにこれなのですが、この「ちょうど良さ」は強みでもあり、弱みでもあると思うのです。

1970年代から80年代中ごろにかけて、その“ちょうど良さ”を求めて移住者が殺到し、そこら中の田んぼや畑をつぶして良質とは決して言えない住宅が乱造され、都市計画もへったくれもないような街並みが生まれて近年の負の遺産となってしまったことは、今の門真市を動かしている上層部の人たちがよく分かっているはずです。

そして、ちょうど良さから移り住んできた人たちと、その子(二世=筆者もその一人)らが育った末の門真がどうなってしまったのか。

門真の特徴を言い当てているとはいえ、あえて“ちょうど良さ”を打ち出さなければならないのは苦しいなと感じます。

今、門真は半世紀ぶりくらいの変革期にあり、古川橋や門真市、大和田の各駅前をはじめ、新たな小中一貫校を含めた門真団地の周辺など、いわゆる「再開発」で街の姿を変えようとしています。これは新たな人を呼び込むインパクトを持っているはずです。

今年春、大規模な工場跡地に大型商業施設が生まれて話題となったように、門真の特性上、今後も同じように大規模な事業所跡地が出る可能性もあるでしょう。

これから“一新していく街”をアピールしたほうが、若い世代の誘致力は上がるのではないかと考えられます。

はっきり言うと、昔の門真からの「一新」を求めているような、より高い納税者を誘致するべき、ということです。

古川橋のタワーマンション建設の議論時にも誰かがぽつりと議事録に残していましたが、新たに住んでもらうには「担税力の高い人」が望ましいわけで、再開発はそうした人を呼び込める可能性が高まるでしょう。

2019年のアンケートでは門真市から転出した理由のトップが「治安」、転入した理由の1位は「住宅価格」となっていた。門真のイメージは「ない」がトップは悲しい(2020年3月「門真市シティプロモーション基本方針」より)

一方、門真市のシティプロモーションで打ち出している「人の温かさを感じる人情味あふれるまち」も、確かに門真が持つ魅力の一つです。

ただ、そんな街の雰囲気を作ってきた人たちも年をとってきて、外へ出て活発に活動するのが難しい時期にきてはいないでしょうか。

かつて公園のベンチやちょっとした空地、近所の商店、文化住宅の軒先あたりには、「誰かが困っていたらよっしゃ!まかしとき!という気概を持った人」(プロモーションサイトより)が多くいたようにも思います。

しかし、今や公園は雑草だらけで高齢層も子どももいなくなり、空地は狭小住宅で埋められ、近所の憩いの場でもあった商店は店を閉じ、文化住宅の密集は解消され(これは良いことですが)、多世代の人が交流する場が少なくなってはいないかと。

再開発は新たな門真をつくる好機

たまたま見たシティプロモーションサイトに関して長々と書いてしまいましたが、近年の門真市は、公式サイトの一新を4年で行ったように情報発信に関して積極的に行っていこうという姿勢を強く見せており、市のプロモーションサイトもそうした一環で設けられたものといえます。

門真の魅力として“ちょうど良さ”を打ち出すのは決して間違ってはいないのでしょうが、それが多くの人の心に刺さるかは微妙です。

救急車がやっと通れるような道しかつくれなかった街を一新すべき時に来ているのかもしれない(門真市内、イメージ)

住宅価格を含め、ちょうど良さを求める人たちを呼び込んで、将来どうしようかというのかが見えてきませんし、大阪市と守口や寝屋川に囲まれた中途半端な街でいい、ということだとしたらあまりに残念です。

今の形で門真の街が生まれてから67年、「市」となってからも60年が経ち、求められる役割も変わって、新しい街をつくらなければならない段階に来ているのではないでしょうか。

新たな市のサイトを見たことを機に、そんなことを感じました。

(2023年11月3日時点の内容です)