門真の「路線バス」事情、大和田・古川橋・萱島と南部を結ぶ

京阪大和田駅前のバス乗場
古川橋駅

東西約5キロ・南北4キロ超という比較的小さいエリアを市域としている門真では、北部を走る京阪電車沿いに人口が集中していますが、駅から離れた南部方面の住宅街へは京阪バスを中心とした路線バス網が築かれています。今回は「門真の路線バス」の現状をまとめてみました。

門真市内の主なバス乗場は、大和田、古川橋、萱島の京阪3駅と地下鉄・門真南駅に加え、「門真団地」も重要なバス結節点となっています。

ここには、門真を代表する「門真市駅」の名がありません。

門真市駅の駅前には立派なバスロータリーこそありますが、平日に1本のみという「路線免許」を維持するための運行しかなく、実質的には路線バスが乗り入れていない駅といえるためです。

門真市駅の駅前には立派なバスロータリーはあるが、路線バスは平日1本のみしか来ない

かつて「門真運転免許試験場」への路線バスが門真市駅から発着するなど賑わっていましたが、1980年代前半に古川橋駅へ移されて以降、門真市駅からのバス路線が衰退していき、今のような状態となりました。

また、市内では西三荘駅にも路線バスは乗り入れていません。門真市駅も西三荘駅も利便性の高い市街地が広がっているので、バスの需要が少ないともいえそうです。

近鉄バスと大阪シティバスも乗り入れ

門真市内のバス路線は、「京阪バス」と「近鉄バス」、「大阪シティバス(旧大阪市営バス)」の3社が担っていますが、大半は京阪バスによる路線です。

近鉄バスは「萱島」(駅近くの門真市域)に、大阪シティバスは「門真南駅」にそれぞれ1路線が乗り入れるにとどまっています。

門真南駅に乗り入れている大阪シティバスの「36号系統」

大阪シティバスの「36号系統」(地下鉄門真南~蒲生四~大阪駅前)は、地下鉄駅から若干距離のある鶴見区の茨田大宮(まったおおみや)や安田周辺の住民向けに古くから運行されており、駅を作ったので門真市域の門真南にも乗り入れた、といった雰囲気の路線です。

「36号系統」の路線図(一部)、門真市内はわずかな区間(大阪シティバスの公式サイトより)

門真南駅周辺の門真市民が鶴見区内や大阪都心方面へ移動するには便利ではあるものの、市内の移動を担う路線というわけではありません。

一方、近鉄バスの「萱島線」萱島~江端~荒本駅前~近鉄八尾駅前)は市の南東部にある大東市市境の御領東や江端から、巣本交差点まで「府道八尾枚方線」を縦断し、萱島までを結んでいる路線です。

近鉄バス「萱島線」の路線図(一部)、萱島~江端間が門真市内となる(近鉄バスの公式サイトより)

近鉄バスは、2009(平成21)年までJR鴻池新田駅から門真南駅や門真団地まで乗り入れていましたが、これを廃止したため、門真市内では萱島線が唯一の路線として残りました。

萱島線は、南河内の八尾から北河内の萱島までを一気に走る長距離路線だけに遅れが発生することも多く、発着地の萱島も駅から若干離れているのが難点でしょうか。

萱島駅では、同じ場所にある京阪のバス停は「京阪萱島駅前」なのに、近鉄バスが「萱島」だけの表記です。

近鉄バスの停留所名は「萱島」だが京阪バスは「京阪萱島駅前」となっている

日本一の規模を持つ私鉄グループとしては、京阪グループへのライバル意識があったのかもしれませんが、実際にバス停は駅から少し離れた門真市上島町の「寝屋川大東線(府道木屋門真線)」沿いにポツンと置かれています。(2022年7月10日追記:降車のバス停は寝屋川市下神田町の「近畿大阪銀行萱島支店」前にあります。京阪バスの寝屋川駅方面行も同じ場所)

萱島駅前の門真市側にはバスを乗り入れるようなスペースが皆無(寝屋川市側にはバスロータリー完備)なのでやむを得ないのですが、初めて来た人ならバス停を探すのは困難といえる分かりづらさで、「駅前」と言えるかどうかは微妙です。

また、萱島は終点なのにバスを回転するスペースもないため、近鉄バスが500メートルほど離れた寝屋川市中神田町に回転場を設けているほどです。

萱島駅近くの門真市側では「寝屋川大東線(府道木屋門真線)」の拡張工事が進んでおり、利便性の高まるバス乗場の新設を期待したい

現在、都市計画道路である「寝屋川大東線」の道路拡張工事が進んでおり、将来的にバス乗場の環境は良くなりそうですが、萱島駅からの移動距離を大幅に短縮するのは厳しい状況。

近鉄バスは運行本数も多くはないため、江端方面から京阪の駅へ移動するなら、京阪バスの大和田駅行路線(2号経路・2A号経路)のほうに分があるのかもしれません。

交通空白地帯に「コミュニティ路線」も

門真市内のバス路線で中心的な存在となっているのは、やはり京阪バスです。

門真市内の京阪バス路線一覧(京阪バス公式サイトの路線図を一部加工)

門真市内だけの京阪バス路線図を作ってみると、市外者の利用が中心となっている「古川橋駅~運転免許試験場」の路線を除いて、京阪沿線の3駅から、門真団地をはじめとした市内住宅街を結んでいることが分かります。

このなかで、「7号経路・7A号経路」という門真市役所~古川橋駅~門真団地~門真南駅を結ぶ路線は、門真市が京阪バスに補助を行って運行を依頼している「コミュニティバス」です。

コミュニティ路線のバス車両は、門真市イメージキャラクター「ガラスケ」で装飾したミニバスを使用(門真南駅)

長い間、公共交通の空白地帯となっていた北島や舟田町、沖町といったエリアからの「足」を確保すべく、市が年間3000万円程度の赤字補填金を負担。2011(平成23)年11月から京阪バスが専用の小型車両で運行しています。

約7キロの区間を1時間に1本から2本程度の頻度で運行し、新型コロナウイルス禍前は利用者が定着しつつありました。しかし、コロナ禍を経て利用者が大きく減っており、どうやって維持していくのかが課題となっています。

大和田駅と“四宮村”を結ぶ路線が主力

これらの路線を除けば、門真の京阪バスは、その多くが大和田駅を発着しているのが特徴で、昔の区画で言うと南東部に位置する旧「四宮村」の住民を京阪の駅まで運ぶことを大きな役割としています。

門真のバスは大和田駅と門真団地の周辺を結ぶ路線が核となっている(門真団地付近)

多くのバスが通る「天辻工場前」(上野口町)や「上馬伏(かみまぶし)」(城垣町/宮前町)は、大和田駅や萱島駅から徒歩圏内なので利用者はそれほど多くは見られませんが、それより遠い「巣本」「南野口」「四宮住宅前」「門真団地」「江端」「御領(※大東市との市境、ぎりぎり江端町内に位置)」といったバス停からの利用者が主な乗客といえます。

江端と上馬伏の間は、京阪に加えて近鉄バスが並走していることからも、現在も一定の需要があることをうかがわせます。

門真団地から大和田駅方面へは今も1時間に4本程度の運行が確保されている(門真団地バス停)

1990年代初頭と比べて門真団地などバス沿線の人口が激減し、バスの運行本数も減っていますが、門真団地を中心としたエリアと大和田駅を結ぶ路線は、今も1時間あたり4~5本程度が確保されていて、門真における路線バスの根幹といえます。

また、大和田駅前では、旧三菱UFJ銀行(大和田支店、2020年10月閉店)の跡地などを門真市が取得し、バスターミナルを再整備しようという動きもあり、京阪電車からバスの乗り継ぎ時に利便性が高まることも期待されます。

大和田駅バスターミナルの目の前にあった三菱UFJ銀行の跡地を門真市が取得し、バス乗場を再整備する計画もある

バスが走る道路のすべてが狭く、半世紀以上にわたって拡張が進んでいないのは不安材料ですが、超高齢化が進み、自家用車に乗れなくなる市民も増えるなかで、今も公共の「足」が確保されているのは心強いことといえます。今後も現状を維持していきたいところです。

また、三ツ島などの南西部エリアには、バス路線の利便性が高くない地域も目立ちますが、大阪メトロ(大阪市交通局)が「長堀鶴見緑地線」を門真南駅から先の交野方面へ延ばすという長期構想も持っており、もし実現すれば交通利便性は飛躍的に高まるでしょう。

門真市内の路線バス一覧、空白地帯は比較的少ないように見える(2022年「門真市総合交通戦略(案)」より)

寝屋川と大東のコミバスも利用できる?

ここからは余談です。門真の路線バスという面では、実は寝屋川市と大東市のコミュニティ路線がごく一部で門真市内に乗り入れており、門真市民が利用できる機会があるかもしれません。

寝屋川市では、萱島駅の東口(寝屋川市側)のバスロータリーから河北・深北緑地行の路線(旧「タウンくる」)で、萱島駅方面行のバスが片道のみ「巣本」を経由しています。

萱島駅の東口(寝屋川市側)には寝屋川市のコミュニティ路線も乗り入れている

巣本と萱島の間には近鉄バスも走っていますが、こちらが上馬伏などの門真市域を通るのに対し、コミュニティ路線は萱島南団地など寝屋川市域を通っているのが特徴です。

また、大東市コミュニティバスの「三箇方面コース(Bコース)」は、ぎりぎり門真市江端町内に「御領東」のバス停を置いており、片道200円(65歳以上は半額)でJR住道駅まで行くことができます。

路線バスではありませんが、かつて「ドリームスリーパー東京・大阪号」という全室個室の高速バス(関東バス・両備バス)路線の運行が2017(平成29)年1月に始まり、両備バスの「門真車庫」にも乗り入れていましたが、残念ながら新型コロナウイルス禍での運休を経て門真車庫への乗り入れは今年(2022年)4月22日付けで廃止となりました。

今後も、京阪バスはもちろん、それ以外のバス動向にも注目していきます。

(2022年6月18日時点の内容です)