新たな門真を象徴、古川橋の駅前再開発で「新図書館」建設へ前進

大規模な再開発が計画されている古川橋駅の北口
再開発

近い未来に門真の象徴となりうる市民向け施設の建設へ向けた動きが加速しています。

門真市は、古川橋駅の北口(北側)「幸福町・垣内町地区」で進めている再開発計画で、新たな図書館の設計と建設を担う事業者の募集を今月(2022年)10月から始めました。

この新図書館は、2021年3月に閉館した「市立文化会館」(中町)の機能も含めた「(仮称)門真市立生涯学習複合施設」との名称で計画。

図書館機能に加え、公民館的な市民活動の場を併せ持った文化と学習の交流施設とする考えです。

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が提案した新図書館のフロアイメージ(門真市公式サイト「生涯学習複合施設整備等」のページより)

2012(平成24)年に閉校した門真一中(第一中学校、幸福町)跡地のうち、2300平方メートル超を使って5階建て(4フロア)のビルを新築。

現時点では、主に1階から3階に図書館機能を置き、4階は子ども向けの絵本などを集めた子育て世代向けフロアを設置。屋上となる5階は「まちとつながる憩いの場」としてテラス空間とする計画です。

新図書館における各フロアのコンセプト(2022年10月「(仮称)門真市立生涯学習複合施設設計・施工一括発注『要求水準書』」より)

建物1階には「カフェ」を設けるほか、館内中央部は1階から5階までをつなぐ書架に囲まれた吹抜け空間「ギャラリーウォーク」を設置。

新図書館の前は広場とし、駅北口から新図書館まで雨天時にも濡れずにアクセスできる通路(歩廊)を設ける予定です。

古川橋駅北口から見た新図書館のイメージとアプローチ案(基本設計などの業務を担当する「遠藤克彦建築研究所」の提案概要書より)

来年(2023年)2月までに本設計と施工を担う事業者を決め、2025(令和7)年中に開館する計画としています。

門真一中の廃校を機に一大再開発

古川橋駅前の北口「幸福町・垣内町地区」では、門真一中の廃校・六中との統合(現「門真はすはな中学校」)を念頭に2007年(平成19)年ごろから周辺再開発の検討を開始。

古川橋(北口)の駅前に建っていた「門真一中」。門真中学校の時代から市を代表する存在だったが、これを廃校とすることで駅前に市が所有する1万6641平方メートルの再開発用地が生まれた(2008(平成20)年3月「幸福町・中町まちづくり基本構想」の掲載写真を一部加工)

市としては、古川橋の駅前という好立地にあった一中跡地を“タネ地”とし、文化住宅や低層の建物が密集していた周辺環境を一新するとともに、今後の門真市を象徴するような“新しい街”を創り出したい考えがありました。

門真一中付近には広大な空地が生まれ、「普賢寺(ふげんじ)」遺跡の発掘も行われた(2022年7月撮影)

周辺の2万8000平方メートル(2.8ヘクタール)にわたって行われる一連の再開発エリアでは、市が約8500平方メートル超のまちづくりを民間に委ねるため、開発案を2021年1月に公募。

古川橋北口の駅前再開発における土地活用イメージ、駅前には2800平方メートルの広場が現れ、その後方に新図書館が置かれ、41階建てタワーマンションがそびえる形となる(門真市公式サイト「生涯学習複合施設整備等」のページより)

これに総合地所(東京都港区)のグループ(参画企業:サンヨーホームズ、万代)と、住友不動産(東京都新宿区)のグループ(参画企業:京阪電鉄不動産、ミサワホーム)の2者が提案に参加しました。

「子育て世代が購入しやすい分譲マンション」として15階建て・213戸のマンションを中心とした開発を提案した総合地所のグループに対し、住友不動産のグループは市内外への訴求力とインパクトを重視した41階建て・567戸のタワーマンションを提案。

住友不動産のグループ(京阪電鉄不動産、ミサワホーム)による土地活用の提案内容が僅差で選ばれた(門真市幸福町・垣内町地区まちづくり用地活用事業「提案概要書」より)

有識者らによる選定委員会の意見は割れ、投票による採点結果も「718.2対721.2」と拮抗。わずか3点差という薄氷の勝利で住友不動産のグループによる提案が選ばれています。

タワマン&図書館で市のイメージ刷新

門真市の平均所得は大阪府内でも結構下のほうでありますので、その辺の課題を解消できたらと思っております。できたら、担税力(税を負担できる力)のある住民の方に入っていただけるような住宅を…」

市の職員とみられる選定委員の1人が選定委員会の場でこう漏らしていたように、古川橋北口の再開発にあたっては収入の高い子育て世帯の流入に大きな期待が込められています。

住友不動産などが2026(令和8)年春ごろまでに建てるという41階建て567戸の“タワマン”は、1戸あたりの販売価格が3500万円から7000万円程度になることが想定されているといいます。

地上41階・567戸、延べ床面積6万2960平方メートルのタワーマンションは2026(令和8)年春ごろまでに建てられ、1戸あたり3500万円~7000万円程度で販売される予定(同)

ただ、これらの物件を買えるような高収入の子育て中または子育て前の“パワーカップル”を門真に誘致するためには、今やそこら中で建てられている「駅前再開発タワマン」だけでは差別化が図れません。

門真のタワマンを選んでもらうためには、「住宅が密集して道路も狭くて窮屈かつ教育水準も高くない街」といった昭和時代にしみついた市のイメージも刷新する必要がありました。

そこで市が重要視したのは、新たな住民の子育てや街のイメージにも好影響を与えそうな「知とコミュニティの拠点」づくりです。

住友不動産のグループによる提案には、“学びと賑わいの広場”やイベント開催、エリアマネジメントなど高所得の子育て世帯に喜ばれそうなキーワードが随所に盛り込まれている(同)

タワマン予定地の至近で一足先に建てられる新図書館「(仮称)門真市立生涯学習複合施設」は、そうした役割を担う切り札的な存在というわけです。

そのため、新図書館では子育て世代向けフロアを設けたり、屋上のテラス空間も親子向けのエリアをつくる計画とし、子どもを重視した施設とすることを打ち出しました。

“CCC新図書館”を「分館」とする奇策

この2025(令和7)年中に開館する新図書館は、施設のコンセプト提案から実際の運営までを民間にゆだねる形の「指定管理者」制度を採用しています。

市は2020年7月から事業者の公募を開始し、図書館流通センター(TRC)・アクティオ・長谷工コミュニティ・日本出版販売という日本の図書館運営で後方支援を担ってきた企業を中心とした4社のグループと、各地の図書館運営受託で何かと話題を集めている枚方市発祥のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の2者がこれに参加。

こちらも投票(採点)の結果は「742.5対753.0」という僅差でCCCの提案が選ばれ、新図書館を運営する指定管理者はCCCが担うことになりました。

CCCが提案した新図書館のイメージ(門真市公式サイト「生涯学習複合施設整備等」のページより)

ただ、市の図書館を全面的に民間に委ねてしまうことに対しては、多方面から反発や不安の声も噴出。

そこで門真市がとったのは、旧門真南高校の跡地を使った「門真市民プラザ」(北島)の図書館分館を残して市直営の「本館」とし、一方で35万冊の収容能力を持ち質・量ともに大きくなる“CCC新図書館”を「分館」にするという“奇策”でした。

これには、新しい図書館の運営事業者を選定するために集められた有識者も困惑し、「本当の意味で新しいものが生まれるのか、という疑問を感じざるを得ない」などとの声も上がりました。明らかに本館の規模で建てられる新図書館がなぜか「分館」に変わってしまったのです。

旧門真南高校の跡地を使った「門真プラザ」にある図書館分館を市直営の“本館化”するという

一方、市民の側からすると、実質的に「中央図書館」といえる規模で“CCC新図書館分館”が古川橋駅前に新設されたうえ、市直営の“本館”も南部地区にできるということは、図書館の拡充という点でマイナス面は少なそうに見えます。

また、古川橋駅や門真市駅といった京阪沿線に集中しがちな公共施設を分散させることは、南部地域の住民サービス向上にもつながる可能性があります。

令和時代は古川橋が「門真の玄関口」か

1977(昭和52)年から長年にわたって使われている門真プラザ内の現図書館は、蔵書収容数が20万(分館分を含む)に満たず、施設の老朽化も進んでいます。

門真プラザにある現在の門真市立図書館、建築からすでに45年が経っている

今後、門真プラザを再開発する構想があるのに、図書館を門真市駅の付近ではなく、タワーマンションとともに別の場所に新築するということは、市は玄関口を古川橋へ移したいようにも見えます。

かつて旧「門真駅」のあった元町・本町地区が門真の中心部という存在でしたが、新橋地区に「門真市駅」や「門真プラザ」を設けて市の玄関口を移してからすでに半世紀が経ちました。

古川橋の駅前はこれから再開発が行われる北口だけでなく、国道163号線側の「南口」も昭和後期に再開発を終えており、市の玄関口となりうる機能はすでに備えている

令和時代はタワマンと新図書館が設けられる古川橋が市の顔となり、門真市駅を中心とした新橋地区は図書館無き後も交通の要衝という位置付けで、門真プラザの再開発を機に違った形で再発展を遂げていくのかもしれません。

)この記事は門真市公式サイト内の「生涯学習複合施設整備等(※「CCC新図書館」計画)」や「門真市幸福町・垣内町地区まちづくり用地活用事業(※住友不動産「タワーマンション」計画)」などのページを参照しました

(2022年10月12日時点の内容です)