廃止が相次ぐ門真のバス路線、空白域は「ワゴン型バス」が担う

門真市が運行するワゴン型バス(門真団地、2025年6月)
再開発

門真南駅門真団地間などを走る門真市の「ワゴン型バス」が今年2025(令和7)年7月1日から運行ルートを拡充し、路線バスの空白域を埋める経路に変わります。

この交通機関は「門真南ルートワゴン型バス社会実験運行」という名で、市が8人乗りのワゴン車を使って2023(令和5)年9月から3年間の予定で始めた“公営ミニ路線バス”。

2025年6月30日までは「門真南駅門真団地~市民プラザ~北島変電所~第二中学校前~沖小学校西~門真沖町郵便局前」というルートで6.5往復を運行し、主に舟田町・沖町や門真団地などと門真南駅を結ぶ役割を担っています。

ワゴン型バスの2025年6月30日までの時刻表(門真市公式サイトより)

ただ、同ワゴンバスでは市役所へ直接行けないことや、駅では買物スポットの多くない門真南駅しかアクセスできないことから、経由地を増やすよう要望が上がっていました。

加えて、2023年12月に京阪バスのダイヤ改正で経由便の無くなった八尾枚方線(府道21号線)沿いにある「四宮住宅前」や「岸和田」、「下馬伏」の各バス停付近を通る公共交通機関の整備も求められていました。

こうした声に応えた結果、7月1日からは四宮・打越・沖町・一番(国道163号線)経由で「門真南駅門真団地~(島頭・ローソン前・四宮公園・四宮住宅前・岸和田・下馬伏・門真車庫前を巡回)~門真団地~市民プラザ前門真市役所門真市駅ららぽーと門真」を結ぶルートに拡充。「ガラスケ」号という愛称も新たに付けられています。

ワゴン型バスの2025年6月30日までのルート(画像上)と7月1日以降のルート(画像下)、路線バスの空白域を中心に大きく拡充されることになる(広報「かどま」令和7年6月号などより)

門真南駅を基準に見ると1日5往復(門真団地までの区間運転1往復含む)、門真団地でも同様に1日5往復(門真南駅行または門真市駅方面行)が毎日運行される形に変わりました。

ワゴン型バス「ガラスケ」号の2025年7月1日からの時刻表(広報「かどま」令和7年6月号より)

コミバス廃止を機にワゴン車化

このワゴン型バスが誕生したのは、門真市が補助金を出して京阪バスが2011(平成23)年12月から運行していたコミュニティバス路線「7・7A系統」(門真市役所~古川橋駅~保健福祉センター~古川町~沖町~南部市民センター~門真団地~三島団地前~門真南駅)が2023年3月末に廃止されたことが発端でした。

門真市のイメージキャラクター「ガラスケ」で装飾した小型バスを使い、京阪バスが運行していたコミュニティ路線「7・7A系統」は2023年3月末で廃止となった(2022年)

当初、同路線の廃止後は市が予約制の「乗合タクシー(門真市乗合タクシー社会実験運行)」(別名デマンドタクシー)を新たに設けることで、高齢者や障害者らの市内移動を担ってきました。

しかし、市議会からは、

  • 現状の乗り合いタクシーはコミュニティバスを補完できる内容ではない
  • コミュニティバスは年間6万~7万人に利用される南部地域には貴重な交通インフラで、廃止により地域の衰退につながりかねない

との理由から「南部地域の活性化を早期に進めるためにも交通インフラを早急に確保、整備するよう強く求める」と2022(令和4)年12月に決議。

市は廃止されたコミュニティバスと同様に誰でも利用可能な交通手段の確保に迫られ、廃止から半年後の2023年9月、タクシー会社に委託する形でワゴン型バスの運行を開始したものです。

3年間の“社会実験”という形で2024年3月までは無料で運行し、その後は1乗車あたり250円の運賃を設定。門真南駅と門真団地、沖町・舟田町など運行ルートが限られていることから、京阪バスなどの路線バスへ乗り継ぐ際には乗継割引(130円引き)も設けてきました。

もう行政が運行するしかない

3年前の2022年6月時点における京阪バスの門真市内を中心とした路線図、免許を維持するため1日1回だけ門真市駅へ乗り入れているような路線もあったが、多くの路線はそれなりに運行本数が確保されていた(京阪バス公式サイト内の路線図を一部加工して制作)

2025年3月の改正を経た現在の門真市内における京阪バスの路線図、大和田駅発の主要幹線と運転免許試験場へのバスだけを残したような格好(京阪バス公式サイト内の路線図を一部加工して制作)

門真市内の路線バス2023年以降に廃止が相次いでおり、2025年6月現在では「大和田駅~南野口~門真団地(西御領・江端循環)」と「大和田駅~巣本~四条畷駅/清滝団地」、「古川橋駅~免許試験場」くらいしか残っておらず、その他の路線は廃止か大幅減便となっています。

大和田駅と寝屋川市駅を結ぶ路線(高柳線14番)は残されたものの、平日6本のみの運行にまで削減された(2025年6月、大和田駅)

“2024年問題”と呼ばれ、同年4月からバス業界での労働時間規制が強化されたことで、これまで運転士が残業するなどして運行していたような路線を維持する余裕が無くなり、全国でバス路線の廃止が相次ぎました。バス会社間で運転士の取り合いのような状況も見られます。

京阪バスでは、1台のバスでできるだけ多くの輸送ができる路線に運転士を配置した結果、小型バスで運行して客も少ないコミュニティバスなどには人員を割くことができなくなったといわれています。

萱島駅の東口には京阪バスが運行する寝屋川市のコミュニティバス(旧タウンくる)が2路線乗り入れていたが、2024年3月末にすべて廃止となった(2022年)

となりの寝屋川市では、萱島駅(東口)に乗り入れていた京阪バスのコミュニティ路線(旧「タウンくる」、黒原線/木田・河北ルート)が2024年3月末ですべて廃止。

急きょ市がワゴン車を購入して「ねやBUS(バス)」と名付け、白ナンバーの「自家用有償旅客運送」(※公共交通の空白地域で自治体などが自家用車を使って有償で運送を行うこと)という形をとり、京阪バス時代と同じルートで輸送を担っています。

旧コミュニティバス路線を引き継ぐ形で寝屋川市がワゴン車を急きょ購入して運行を始めた「ねやBUS(バス)」(2025年6月、萱島駅東口)

通勤・通学でバスを使う人口が減っていることに加え、労働規制の強化で乗務員の確保も難しくなり、バス会社は事業を維持するだけでも精一杯という状況で、今のところ採算の合わない路線の担い手は行政以外に見つかりません。

門真南部で相次ぐ再開発計画に期待

7月1日から運行が始まる門真市のワゴン型バス「ガラスケ」号は、市の南部を中心に公共交通の空白域を網羅するルートをとっており、市役所をはじめ、バス路線が消えた門真市駅ららぽーと門真へも乗り入れる点で利用価値は高そうです。

門真南駅で待機する門真市のワゴン型バス(2025年6月)

同路線の中心的な存在である門真団地では、今夏にも建て替え(旧「府営門真住宅」分、現門真市営「千石西町住宅」)が完了し、建物の高層化で余った敷地は、門真市民プラザ(北島=旧門真南高校)付近とともに「北島西・北周辺地区」と名付けられ、スポーツ施設や防災公園などへ再開発を計画中です。

また、8年ほど先の2033(令和15)年度に大阪モノレールの延伸開業を控える門真南駅では、UR都市機構と連携して駅周辺を対象とした「門真南駅周辺地区まちづくりビジョン」の策定が進められており、再開発が行われる可能性が高くなっています。

今後、利用者が増える要素は残されているだけに、それまでの間にガラスケ号が沿線の乗客を開拓する役割も期待されます。

(2025年6月21日時点の内容です)

)コミュニティバスの廃止にいたる経緯は2022年9月に書いた「門真市のコミバス路線、京阪『7・7A系統』が来春までに廃止へ」を、2022年6月時点の路線バスに関してまとめた記事は「門真の『路線バス』事情、大和田・古川橋・萱島と南部を結ぶ」をそれぞれご覧ください。

)この記事は門真市公式サイトの「門真南ルートワゴン型バス社会実験運行」に関するページをはじめ門真市議会議事録、広報「かどま」令和7年6月号寝屋川市と同市議会の公式サイトなどを参照しました