門真でもついに“小中一貫校”の新設に向けて本格的な工事が始まりました。
門真市は脇田小学校(脇田町)と砂子小学校(三ツ島6丁目)、第四中学校(門真四中、江端町)の3校を統合し、小学校・中学校の9年間を同じ校舎内で学ぶ一貫校(義務教育学校)となる「水桜(すいおう)学園」を2026(令和8)年4月に開校する計画です。
門真では子どもの多かった1970年代から80年代に合わせて整備された市立の小・中学校が過剰になっており、2005(平成17)年に南小学校(千石西町)と水島小学校(三ツ島6)の統合を皮切りに整理へ向けた議論を始めましたが、その“第二幕”として新たに打ち出されたのが一貫校という考え方でした。
今回の動きは、門真市立学校で最初に統合した南小と水島小による「砂子小学校」(2005年開校、旧水島小の校舎を使用)の児童数が減り続け、このままでは複数学年が1つの教室で学ぶ「複式学級」になりかねないという懸念がきっかけです。
砂子小は2校の統合によって生まれた小学校でしたが、この18年でさらに校区内から子どもが減少し、再統合するしかない状況となってしまいました。それだけ市内の子どもが減り続けています。
砂子小の再統合ではなく新学校に
児童減という課題に対し、学校の再統合は根本的な解決策にはなりづらいのが現状で、相次ぐ統合にはマイナスなイメージもつきまといます。
そこで、この機に中学校区ごと再編し、2つの小学校と中学校を1つの新しい学校としてまとめ、新たな教育環境でイメージも刷新してしまおうというのが門真市の出した結論でした。
さいわい、といえるかどうかは微妙ですが、砂子小校区の中学校である門真四中も、同じ中学校区内の脇田小も1972(昭和47)年に開校した校舎が築50年超に達しており、建て替えや大規模リフォームの時期が迫っています。
また、脇田小と門真四中は住所こそ異なりますが隣接して建てられており、行き来がすぐにできるほどの近さ。砂子小から両校へも徒歩10分ほどの距離でそれほど遠い環境でもありません。
そうした状況も相まって脇田小と門真四中を取り壊し、2校の跡地を使ってまったく新しい形の「小中学校」を建てる話になったわけです。
経緯だけ書くと簡単に決定したかのように感じてしまいますが、この議論が本格的に始まったのは2019年の夏ごろですので、3年以上の時間を費やして話し合われ、ようやく4年目の今夏から工事に入る段階にまでいたりました。
名所・砂子水路の「桜」を校名に採用
まず、この8月から脇田小が砂子小の敷地内にいったん合流。来年(2024年)4月に両校は正式に統合され、「水桜(すいおう)小学校」という名に変わります。
なお、水桜(すいおう)というのは、近所の「砂子水路」が桜の名所であることから付けられた名で、多数の候補のなかから「千石さくら」と「水桜」の2つを児童・生徒による決戦投票にかけ、483票対229票で水桜が選ばれました。
今後2年半ほどかけて脇田小の校舎を取り壊したうえで、新たな小中一貫校の校舎を建築。2026(令和8)年4月の新校舎完成とともに隣接地から門真四中が移り、水桜小学校(脇田小+砂子小)も合流して「門真市立水桜学園」が開校することになります。
脇田小の児童は慣れない場所へ2年半ほど通わなくてはならず、砂子小の児童は通い慣れた校舎から2年半後に離れるという環境の変化が伴います。
一方、新学校が開校すれば、何年生であっても新たな小中学校では中学3年生時までそのまま通うことができるようになります。
今、門真四中で学ぶ生徒は卒業後に新校舎が完成することになるため恩恵は受けられないのですが、現在の校舎で卒業まで学ぶことができ、大きな影響を受けることはないものとみられます。
門真四中の跡地は校舎を解体したのち、新小中学校のグラウンドなどとして使われる予定とのことです。
また、近くの東小学校(岸和田3)は第五中学校(北岸和田3)の通学区域(校区)となっていますが、東小校区の江端地区(江端町8番から39番まで※35番1号から3号までを除く)に関しては、新小中学校への近さを考慮してこちらへの通学も選択できるように変わる予定です。
激減した小中学生、古い校舎も限界
以前も触れましたが、門真市内の児童(小学生)生徒(中学生)の数は、1980(昭和55)年の時点で2万4000人超に達していました。
ここをピークに17年後の1997(平成9)年には半分くらいまで減り、それから少し落ち着いたものの2010(平成22)年ごろから再び下降線を描き、今年(2023年)5月1日時点では6625人(小学校4329人・中学校2296人)とピーク時の3分の1にも満たない数にまで減少。
今から6年後の2029(令和11)年には5323人(小学校3473人・中学校1850人)とさらに減るという見通しが現時点で示されています。
しかも門真の小中学校は、第一中学校(幸福町)と第六中学校(中町)が統合して2012(平成24)年に中町(旧中央小学校跡)に新設された「門真はすはな中学校」を除き、小中学校の校舎はすべて築40年から築58年という古さ。
これは急増する子どもへの対応が迫られた1970年代から80年代に校舎が集中して建てられたためです。
平成期に校舎などの大規模改修を行った沖小学校(沖町)や五月田小学校(北島町)、門真みらい小学校(浜町)、速見小学校(速見町)、門真五中(北岸和田3)といった学校を除き、改修するか建て替えに踏み切らない限り、近い将来に建物としての限界を迎えることが予想されています。
児童生徒が急減して維持が難しくなったうえに校舎寿命も少なく、もはや残された道は「統合」という名の廃校か、子どもの人口を増やす以外の方法はありません。
たとえ2つの古い校舎の学校を統合し、校名のみを変えて少しだけ築年数の浅いマシな校舎に集約したところで他の街から人を呼び込むような要素にはなりづらいですし、はすはな以外の中学校へ進めばまた古い校舎が待っています。
今回の統合を議論する際の会議で話題になっていましたが、学校のトイレがあまりに古くて嫌なので児童が急いで家に帰って用を足すといったケースも見られるといい、こんな状況では人を呼び込むどころか、流出を招くばかりです。
裕福な家庭なら子どもを私立中学校へ進学させる際に門真を出ていこうという選択になるかもしれませんし、小学校在学時であっても「どうせ近いうちに統合されるのなら」と“痛み”を避けるための引っ越しも選択肢として考えるでしょう。
入学から9年かけて学べる新小中学校
門真市立水桜学園の開校は、小学校の数を減らす一方、新たな形の学校に変えることで子どもの人口を呼び込もうとの思いも秘められています。
新しい小中学校では、小学校入学から中学校を卒業するまで9年間をかけて教育カリキュラムを組み、「子どもたちがより良い教育環境で個別最適に学ぶことができる」(「(仮称)門真市立第四中学校区小中一貫校整備基本計画」より)ようにするという目標が掲げられています。
門真の教育で特に重視されている「人とのつながり」は、小学1年生から中学3年生までが同じ場で学ぶことにより強化される可能性が高いですし、新校舎もそうした目標に最適化されたものとなるでしょう。小中一貫教育は、中学生になったら急に成績も生活態度も悪くなるといったギャップを緩和するにも役立つはずです。
そして、校内暴力が吹き荒れた時代からほとんど変わっていない著しく時代遅れの老朽校舎を捨てることは、内外へ向けてのイメージが格段に良くなります。
過去に門真一中から七中までの7校に通った経験を持つ今の40歳代から50歳代あたりのOB・OGに思い出を尋ねてみれば、過去のイメージを払拭しなければならない理由が分かるはずです。
“思い出”や“寂しさ”という個人の感情を押し殺して考えてみれば、門真一中や六中よりも校舎のきれいな「門真はすはな中学校」のほうが他の街から人を呼び込むには好印象ですし、同じように築50年超の門真四中よりも真新しい「門真市立水桜学園」に自分の子を入れたくなるのではないでしょうか。
門真で初の小中一貫校である水桜学園の開校は近未来への期待を感じさせる一方、まだ過剰な状態にある他の小中学校をどうするのかという課題は残されています。
次は門真五中の校区内にある北巣本小学校(北巣本町)の児童数が激減しているので四宮小学校(四宮2丁目)と統合させるという方向は固まっていますが、今後も市内全体で児童生徒が減り続けるため、学校数を減らす流れは避けられず、今秋には新たな統合議論が始まります。
将来の門真を背負う人々の義務教育という重要な部分を担う水桜学園はどのような成果を見せるのか。これから門真の学校統合の議論を進めるうえでも大きな方向性を示すことになりそうです。
(※)この記事は門真市公式サイト内の「門真市学校適正配置審議会」の資料や議事録、特設ページ「第四中学校区の新しい学校づくり」で公表されている各種資料などを参照しました
(2023年10月27日時点の内容です)